「子育ては文化だ」
そう言ったのは京都でおもちゃ屋さんを営む岩城さんでした。
「妊娠、出産、授乳までは本能だけど、子育てはそこには含まれていない。
今の世の中、子どもを産んだら育てられると思い込んでるけれど大きな間違い。
子育ては多くの人間関係の中で継承される文化です。」
その言葉は、当時6ヶ月の娘を抱いた私には衝撃でした。
勝手に色んなものを背負って限界ギリギリだった私にとって、
崖っぷちで救われた言葉でもありました。
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バリに来て、この言葉が身に沁みる毎日です。
なんだかもう、言葉で表現するのが嫌になるくらい、
今まで私の中に(無意識にも)あった固定観念が、
どごごごご、がらがらがら、ぐわわわわっしゃん、と、
交通事故にあったレベルで崩壊していくのです。
(崩壊中の私、きっとこんな感じ)
甘やかすと甘えさせる、の違いを説明するコラムなんかがありますが、
もうそんなの鼻先で笑っちゃうくらいの根本的な違いなんです。
「え?甘やかして何が悪いの?」
日本人の私から見たら、それくらいに感じる。
最初の頃はバリの人たちの子どもへの対応に、
「ウソ!」「マジで!」「ほんとゴメンナサイ」っていう気持ちになりました。
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子どもの泣き声がすれば、大人がわらわら集まって来て、
お菓子やら、菓子パンやら、ジュースやら、泣き止ませるために与えます。
子どもが暇そうにしていたら、
お菓子やら、菓子パンやら、ジュースやら、とりあえず与えます。
仕事や買い物からお家に帰ってくる時には、
お菓子やら、菓子パンやら、ジュースやら、お土産に与えます。
これを、甘やかしと言わずしてなんと言う!!!
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子どもがテレビが見たいと言えば見せてくれて、
遊びたいと言えば遊ばしてくれて、
何か食べたいと言えば食べ物を与えてくれる。
そこには、
「もう寝る時間だからダメよ」とか
「もうすぐご飯だから我慢しなさい」とか、
そういう言葉が、、、ない。
子どもが遊び回ってる横で、大人はペチャクチャお喋りしてて、
まさに全然視界に入ってない時も沢山あって、
きっと日本だったら「目を離して怪我でもしたらどうするの!」と、
クレームが入りそうなことも多々。
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でもね、よくよく見ると、みんな幸せそうで。
いっぱい愛情もらって子どもはニコニコで、
そんな子どもを見て大人もニコニコで、
それぞれに好きなことをして満足そうで。
その中で、ハラハラしたり、ヤキモキしたり、子どもに嫌々ついて回ったり、
ただ一人幸せそうじゃないのが、日本人のこの私。
日本で、子どものためと疑わず、これも親の愛情と思ってやってきたことが、
子どもも、私も、周りの大人も、心から幸せそうに笑ってる人はいたのだろうか。
あれ?
私の中にあるそもそもの「定義」というものは、
信じて疑わずにいた「子育て」というものは、
根本的に違っていたんじゃなかろうか?
(なんか、こんな家族像に囚われていたのかも)
「今」を我慢すること、
「辛さ」を乗り越えること、
その先に「幸せ」な「未来」がやってくる。
そう信じてやってきたけれど、
本当に子どもの心の中に、
「辛さ」を「乗り越えた」という「自信」が芽生えてるのか。
なんとなく、今の私には「NO」だと思える。
大人も、子どもも、犬でさえも、
バリという島では自分の「今」大事に、自由に生きている。