私が20歳の頃、修行先のケーキ屋を辞めて毎日暇をしていた時のこと。
次の修業先も決まらないまま、札幌でもお洒落なエリアの円山になんとなく引越しをしました。
いつまでも仕事をしないで暮らせるわけでもないので、
家からバイクで通える円山の有名な老舗カフェでアルバイトを始めました。
カフェで働くのは憧れだったものの、
慣れてくるとやはり浮かんでくるのはお菓子を作りたいという想い。
カフェのお菓子を担当したいけれど、上手くいかない。
どこか良いケーキ屋に就職したいけど見つからない。
どんどん焦りと、こんなことしてる自分への怒りとで、
悶々とした日々を過ごしていたある日、
そのカフェのオーナーとの面談で言われた言葉があります。
「無駄というのはね、無駄じゃないんだよ」
「人間はね、生まれた時から360度どの方向にも進んでいける。
その中で一つゴールを決めて歩き始めるのだけど、
人は愚かだからまっすぐ進んでるつもりでも気づかないうちに道が逸れてしまうものなんだ。
だから、一見無駄だと思うようなことで自分の進む道の両脇を埋めながら進むことが、
望むゴールに進むための近道なんだ。だから無駄は無駄じゃないんだよ。」
20歳そこいらの私には、なんとなくわかるけど「私はお菓子がやりたいんだ!」と反発心ばかりで話半分でした。
それがよく理解できたのはもっと大人になってからのこと。。。
振り返っても、お菓子が好きだと思いながらも、違う職種も体験してみたい自分もいて、
次の店を決めずに辞めては、3ヶ月くらいアルバイトをしてみるというのを繰り返していました。
その度に「やっぱりお菓子がやりたい!」という思いを強くして、次の修業先に進んでいたのです。
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無駄という字を調べると。
無・・・ない
駄・・・必要のない
そう、無駄とは「必要のないものじゃない」ということ!
これを知った時は、顎が外れるくらい驚きました。
無駄の中にこそ価値が隠れているのかもしれない。
無駄が人生を豊かにするのかもしれない。
そんなことを、バリでの何もない毎日の中でふっと思い出す。